スペインの乳歯にまつわる風習が世界各地に広まった! ネズミのぺレスのお話

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はじめに

 

欧米では、乳歯が抜け落ちると小人の姿をした妖精トゥースフェアリーがやってくるという風習があります。枕の下や枕元のコップに乳歯を入れて置くと眠っている間にトゥースフェアリーがコインやお菓子、プレゼントをこっそり交換してくれるのです。

 

このプレゼントを持ってきてくれるトゥースフェアリーの姿は、国や地域によってリスやウサギなど他の動物や妖精にかわるのですが、スペインをはじめとしてラテン語圏(中南米など)ではねずみのぺレスというキャラクターが活躍します。一説には実はこのねずみのぺレスの方がトゥースフェアリーの原型とも言われています。

 

丈夫な歯を持つねずみのように強くて立派な歯が、我が子にも生えてほしいという願いから、ねずみが歯の守り神的な存在として考えられたのは何となく理解できます。しかし、どうしてねずみがプレゼントを持って来てくれるという風習になっているのでしょうか?

 

前回の記事でも、トゥースフェアリーのお話を紹介しました。今回も乳歯にまつわる風習のお話ですので、まだ読んでいないという方は、こちらも読んでみてくださいね。

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 こんにちは。カラベアです。

 

皆さんはトゥースフェアリーってどんな姿か想像したことがありますか?

 

ネットの通販などで購入できる乳歯入れや絵本といった商品では、トゥースフェアリーは羽の生えた可愛い小人の女の子の姿をしています。なのでカラベアの中で、トゥースフェアリーというのは、すかっり小人の妖精というイメージが定着していました。

 

 

これが実は、ねずみのキャラクターが姿を変えて広まっていったなんて驚きです。今回はお子さんの乳歯が抜けるたびに、誰かに話したくなるネズミのぺレスのお話をさせていただきます。

 

抜けた乳歯についての風習 起源はよく分からない⁉

そもそも乳歯が抜けたら何かおまじないや願掛けをおこなうという風習はいつから始まったのか。残念ながらはっきりいつからと断定するのは難しいようです。

 

しかし、古くは欧神話に関わるヴァイキングの時代から、初めて乳歯の抜けた子どもにお金をプレゼントする様子が書物に残されています。また古代ヨーロッパの時代でも、子どもの乳歯が抜けると枕元にコインやプレゼントを隠して子どもを喜ばせる風習があったとか。

 

日本でもねずみに子どもに強い歯が生えるようお願いしながら、抜けた乳歯を屋根や縁の下に投げるという風習がありますが、カラベアが調べた限りこれもはっきりいつからとは断定できないようでした。

 

そんな中、ねずみのペレスについては、その出自がはっきりとしています。このぺレスというキャラクターは、スペインのとある王様(王子様)のために生み出された物語の中に登場するのです。

 

ねずみのぺレスの物語

1886-1941年に存在したスペインの国王にアルフォンソ13世という人物がいます。このアルフォンソ13世は、父親であり先代国王のアルフォンソ12世が生まれる半年前に亡くなってしまったため、生まれたその瞬間から国王になるという珍しい経歴の持ち主です。

 

生まれたばかりの乳児が国王としての仕事をこなすことはできません。そのため息子が16歳となり成人するまで、その母親である王太后マリア・クリスティーナが代わってスペインを統治していました。

 

生まれながらの国王であったアルフォンソ13世は幼少時に体が弱かったこともあり、とても大切にされ育ったようです。(甘やかされすぎたせいか、女性関係がだらしなかったとか・・・)

 

アルフォンソ13世が8歳になり初めて乳歯が抜けたとき、彼はそのことにとてもショックを受け心配します。そんな息子を安心させるため母親であるマリア・クリスティーナはイエズス会の神父であるルイス・コロマに抜けた乳歯アルフォンソ本人を主人公とした物語を創作するように依頼するのです。

 

そうして誕生した物語が「ラトン・ぺレス」でした。ラトンとは、スペイン語で小さなねずみを意味します。アルフォンソ13世は幼少時ブビ王という愛称で呼ばれており、この物語の主人公はブビという王族の少年です。当初は文章だけの物語でしたが、1911年にはイラスト付きで出版されています。

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ある晩のこと、抜けた乳歯を回収しに来たネズミのぺレスと少年ブビが出会います。そこでぺレスと友達となったブビは、王宮とは違う楽しそうな街中の様子を教えてもらいました。そして次の子どもの乳歯をもらいに行くというペレスにお願いして、ブビも一緒についていくことになるのです。

 

部屋を抜け出すためペレスがしっぽで魔法をかけるとブビの姿は小ねずみに変わり、二匹は次の子どもの家へと出かけていきます。その途中で、ペレスの家に立ち寄りコインを持っていくのですが、子どもの家に着くとブビはとてもショックを受けます。

 

自分と同じ年頃の少年が、お腹を空かせて寒さに震えながら眠っているという民衆の貧しい生活を目の当たりにしてしまうのです。ペレスが持ってきたコインは、少年の暮らしが少しでも楽になるようにという贈り物でした。

 

ぺレスと別れ帰ってきたブビは、母親にどうしてこのような理不尽が起こるのか問いかけます。母親は、ブビはお兄さんとして皆を見守る役割を神様から与えられているのよと教えます。こうしてブビ王は、世の中には貧しさに苦しむ子どもたちが存在し、自分が王として民衆を導く強さと優しさをもたなければならないということを学ぶ物語となっています。

 

 

このアルフォンソ13世のために作られた物語が民衆にも親しまれ、様々な国の言葉で翻訳され世界中に広まります。そしてこの物語を元にした言い伝えや多くの作品に派生していきました。「ラトンシート・ぺレス」「エル・ラトン」「ペレスねずみ」など国や地域によって呼び名は変わり、時には羽の生えたねずみの女の子といったアレンジも加えられていきました。

 

 

 ねずみから小人の姿の妖精へ

20世紀に入り、多くのヨーロッパ人がアメリカ大陸に移住するようになり、ねずみのぺレスの物語も一緒に伝えられることになります。

 

まだネズミのペレスのことをよく知らなかったアメリカ人は、羽の生えたねずみの姿を見てトゥースフェアリー「歯の妖精」という名前をつけ、そして羽の生えた女の子の妖精というイメージの方が定着していったのでした。

 

そんなねずみのぺレスと欧米のトゥースフェアリーへの移り変わりをかわいらしく紹介してくれる絵本もあります。「ねずみのぺレスと歯のお話」というタイトルの絵本です。

画像をクリックするとAmazonの商品紹介のページに飛びますので、興味をお持ちの方はご覧になってみてください。

 

イラストや配色がとても素敵で、コロマ神父が生み出したペレスがまた生まれ変わって、様々にアレンジされカラフルでかわいくなったペレスの子孫たちの姿を見ると心がほっこりします。

 

前回紹介した絵本「はがぬけたらどうするの?せかいのこどもたちのはなし」と同様に、こちらも乳歯にまつわる世界の習慣について学べる知識絵本です。

 

表紙や中のイラストが素敵なので、すぐ手にとれる場所に表紙が見えるように飾っておきたいなーなんてカラベアも思ってしまうオシャレな絵本ですね。

 

 

最後に

ねずみのぺレスの物語がトゥースフェアリーの言い伝えに変わっていくまでには、このような歴史があったのですね。カラベアもねずみのぺレスについて調べていて、文化や習慣の裏には様々な歴史のつながりがあることを実感させられ、とても興味深く楽しかったです。

 

コロマ神父の書いた「ラトン・ぺレス」に登場するぺレスの家の住所は、スペインに実在する住所でした。今もその場所はペレスの家があった場所として知られ、「ねずみのぺレス博物館」として残されています。いつかスペイン旅行にいって博物館に飾られたペレスの銅像を見てみたいものですね。

 

一説にはねずみのぺレスの起源は、『妖精物語』で有名なフランスの作家ドーノワ伯爵夫人の作品「小さなやさしいねずみ」に出てくる妖精が化けたねずみという説もあります。17世紀の終わり頃にフランスで妖精ブームが巻き起こり、そのときに妖精のお話がたくさん作られたのだとか。

 

乳歯にまつわる言い伝えやおまじないには、まだまだ謎がつきません。今後もカラベアは乳歯にまつわる風習ねずみのぺレスについて、新しい情報を追っていき、真相に近づきたいと思います!

 

 

今回のお話はねずみのぺレスの物語の紹介でしたが、どうだったでしょうか?

 

これからも皆さんが楽しめそうな情報を更新していきますね。それでは最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

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